【体験記】未来の国宝を探しに。中之島美術館『日本美術の鉱脈展』へ行ってきた
先日、大阪・中之島美術館へ行ってきました。
実は最初の目的は、館内の常設展示にある巨大な猫のアート、
ヤノベケンジ作《シップスキャット》 を見ること。 ヤノベケンジさんの作品を初めてみたのは2013年に愛知県で行われたトリエンナーレの時
トリエンナーレの時は防護服を着た子供の立像で(サンチャイルド)6メートルもある先品で大きさに圧倒されましたが
このSHIP’S CAT(シップスキャット)もデカイ!
高さ約6.7m、金色に輝く宇宙服を着た猫は、美術館のシンボル的存在で、
「未来を旅する守り神」として作られた現代アートです。
SNSで何度も写真を見かけ、「一度は本物を見てみたい」とずっと思っていました。
そして実物は期待以上。間近で見上げると、キラキラ光る表面やユーモラスな表情に圧倒され、
「これは写真じゃ伝わらない」と感動してしまいました。
そんなスペースキャットを楽しんだ後、館内で偶然見つけたのが今回の特別展、
『日本美術の鉱脈展 ―未来の国宝を探せ!』。
軽い気持ちで足を運んだのですが、
結果的に僕にとって、この日のいちばんの「発見」はこの展覧会でした。
展覧会の内容は?
『日本美術の鉱脈展』は、
“まだあまり知られていないけれど、未来の国宝になるかもしれない”
そんな日本美術の作品や作家を紹介する特別展。
展示は、縄文土器から江戸・明治・大正・現代アートまで、
ジャンルや時代を横断する構成。
単なる「名作展」ではなく、
私たちに「未来に何を残したい?」と問いかけてくるような内容です。
目玉作品:奇跡の合作と幻の復元
今回の展示の目玉として、特に心を打たれたのが二つの作品です。
◼ 伊藤若冲と円山応挙、奇跡の合作屏風
一つ目は、江戸時代を代表する画家、伊藤若冲と円山応挙の合作とされる屏風。
もともと別々に所蔵されていた
若冲の《竹鶏図屏風》と、応挙の《梅鯉図屏風》。
近年の研究で、この二つが同じ金箔地、同じ制作時期であることが判明し、
屏風の左右で互いに呼応するように構成された「合作」だった可能性が高いとわかってきました。
若冲の描く鳥や動物は、羽根一本一本まで緻密に描き込まれていますが、絵の線の太さが印象的でとても生命感があふれていました
一方、応挙の鯉は水中をしなやかに泳ぎ、木の枝のしなやかさとともに優美さを感じましたが
こちらの絵も控えめでしたが線のお太さを感じる部分があり
この太さに二つの絵の交わりを僕は感じました。
二人の全く違う個性が、金屏風という空間で見事に共存し、響き合っていて良かったです
音声ガイドでも説明があったのですが、先に円山応挙が描いたとされてました。先に描いた応挙の心境、この応挙の作品を見てから描く若冲の心境。二人が何を思ってこの絵を描いてたのかと考えると色々と面白いなと思いました。
◼ 伊藤若冲《釈迦十六羅漢図屏風》デジタル復元
もう一つの目玉は、幻の大作、伊藤若冲《釈迦十六羅漢図屏風》のデジタル復元。
この作品は、かつて京都・相国寺に所蔵されていましたが、戦災で焼失。
現存するのは白黒写真のみです。
今回の展示では、その白黒写真をもとに、
若冲独特の鮮烈な色彩を最新のデジタル技術で復元。
羅漢たちの衣の真紅、釈迦を包む黄金、背景の鮮やかな草花――
その色がよみがえった屏風は、まさに「生きている若冲」を体感できるものでした。
過去と現在、失われたものと再生、新たな挑戦が交錯する光景に、思わず胸が熱くなりました。
この復元したいる様子をまとめた動画(NHK)もあり、作業されている様子がとても凄くて、面白いので是非、見てほしいです
心に残った作家たち
そして何より、僕自身にとっての“お宝発見”があったのは、
以下の3人の作家との出会いです。
笠木治郎吉(かさぎ じろきち)
大正から昭和にかけて活動した画家。
彼の描く人々は、なぜかじんわりと心に響きます。
特に新聞配達の絵は、臨場感がとてもあって面白かったです
男の人の表情や筋肉に生命感があって、風景や服装もリアルで見ているうちに感動に変わっていきました。
島成園(しま せいえん)
大正から昭和初期の女性画家で、女性日本画のパイオニア的存在。
上村松園、池田芭園と並び、(三都三園)と称されました
彼女の描く女性像は、儚さ、気高さ、色気、哀しみ――
一言では表せない感情が交錯し、画面に命が宿っていました
今回、展示したあった『伽羅の薫』という先品
とても妖艶で女性ならではの繊細な視線や表情が感じられました、描かれている雰囲気、線や色のぼかし具合が
とても僕の好みで
「もっと島成園を知りたい」と強く惹かれました。
岡崎龍之佑(おかざき りゅうのすけ)
現代の若手作家で、今回の展示で強く心をつかまれた一人。
彼の作品《JOMONJOMON ― Emotion Beat》《JOMONJOMON ― Tender》は、
縄文土器の造形や文様をモチーフにしたドレス作品。他にもJOMONJOMON”シリーズがあるようです
自然の脅威を感じながら、自然の恩恵を願うという土器に込められた人々の思いからインスパイアされた。
素材は、伸縮性のあるリブ素材の軽量ニット。ボーンを入れており、歩くたびに弾むように揺れ動く。
花びらをまとうようなドレスなどは、自然崇拝から着想したそうです
ベルベット生地やプラスチック、ボーン素材を組み合わせた立体作品は、
赤やボルドーの曲線が複雑に絡み合い、壁に落ちる影までも作品の一部のようでした。
これから行く人へのおすすめ
✅ 平日昼間は比較的ゆったり見られる。
✅ 写真撮影OKのエリア(特に現代アートコーナー)あり。
✅ ミュージアムショップでは展覧会図録のほか、若冲や応挙、スペースキャットのグッズも豊富。
✅ 所要時間は1.5〜2時間ほど。
✅ 金土祝前日は19時まで開館。夕方からの訪問もおすすめ。
✅音声ガイド(声:井浦 新さん)
まとめ
中之島美術館『日本美術の鉱脈展』は、
「まだ知らない名作や作家に出会う場」でした。
偶然の訪問だったけれど、スペースキャットとともに、
僕にとって忘れられない発見の時間になりました。
会期は8月31日まで。
これから行く人には、ぜひ心の鉱脈を掘り起こすような気持ちで訪れてご自身のお宝を発見してほしいです。